同位体と原子量
周期表では塩素は約35.45とされていますが、35.45の重さの塩素原子は一つもありません。どれも塩素-35か塩素-37のどちらかです。
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同じ元素でも重さがちがう
同じ元素の同位体は陽子と電子の数が同じなので、反応のしかたも同じです。ちがうのは中性子の数だけで、それによって質量が変わります。水素がよい例です。ふつうの水素には中性子がまったくありません。重水素は中性子を一つもち、重さは約二倍です。三重水素は中性子を二つもち、放射性です。NISTの測定では、天然の水素の99.9885%がふつうの水素、0.0115%が重水素です。
| 同位体 | 陽子 | 中性子 | 天然の存在比 |
|---|---|---|---|
| H-1 | 1 | 0 | 99.9885% |
| H-2(D) | 1 | 1 | 0.0115% |
| H-3(T) | 1 | 2 | ごく微量 |
| C-12 | 6 | 6 | 98.93% |
| C-13 | 6 | 7 | 1.07% |
| C-14 | 6 | 8 | ごく微量 |
| Cl-35 | 17 | 18 | 75.76% |
| Cl-37 | 17 | 20 | 24.24% |
35.45はどこから来るのか
周期表にのっている原子量は、天然に存在するその元素のすべての原子の平均で、それぞれの同位体の存在比で重みをつけたものです。質量は原子質量単位で測り、炭素-12の原子一個がちょうど12です。塩素について、NISTは塩素-35の質量を34.969、存在比を75.76%、塩素-37の質量を36.966、存在比を24.24%としています。
それぞれの質量に存在比をかけてたします。34.969 × 0.7576 + 36.966 × 0.2424 ≈ 26.49 + 8.96 ≈ 35.45 です。塩素原子の四つのうち三つが軽いほうなので、平均は37よりも35にずっと近くなります。炭素で同じ計算をすると 12 × 0.9893 + 13.003 × 0.0107 で約12.011となり、炭素が12より少し大きく表示されるのはこのためです。
同位体の質量は整数に近いのですが、ぴったり整数ではないことに注意しましょう。塩素-35の質量数は35で、陽子17個と中性子18個を数えただけの値ですが、測定した質量は34.969です。質量数はいつも整数ですが、測定した質量はそうではありません。陽子と中性子はそれぞれぴったり1単位ではなく、原子核を結びつけるのに質量の一部が使われるからです。
NISTは塩素の原子量を一つの値ではなく、35.446から35.457までの範囲で示しています。塩素-37の存在比が、場所のちがう試料ごとに少しずつ異なるからです。ふだんの作業では、化学者は35.45に丸めて使います。水素や炭素など、ほかのいくつかの元素も、同じ理由で範囲で示されています。
不安定な同位体
不安定な同位体の中には、放射線を出しながらゆっくりとほかの元素に変わるものがあります。炭素-14もその一つです。NISTによると、炭素-14はどんな量でも5,730年で半分が窒素-14に変わります。この一定の割合を半減期といいます。生物は生きている間ずっと炭素をとり入れていて、その中にはごくわずかな炭素-14も含まれます。死ぬと炭素-14は補充されなくなり、その割合は5,730年ごとに半分になります。そのため、残っている量を測れば、骨や種や昔のたき火の跡がどれくらい古いかを考古学者が知ることができます。
ふだん出会う同位体のほとんどは安定です。炭素-12と炭素-13はひとりでに変わることはなく、二つの塩素の同位体や、ふつうの水素と重水素も同じです。上の表の八つの同位体(Dは重水素、Tは三重水素。存在比はNISTの値)のうち、放射性なのは三重水素と炭素-14だけです。
| 重水素 | 中性子を1個もつ水素 |
| 三重水素 | 中性子を2個もつ水素。放射性 |
| 原子量 | 元素の原子の平均質量。同位体の存在比で重みをつけたもの |
| 半減期 | 放射性同位体の半分が変わるまでの時間 |
| 炭素-14の半減期 | 5,730年 |
| 原子質量単位 | 炭素-12の原子一個 = ちょうど12 |
- 同じ元素の同位体でちがうのは…
- 陽子の数
- 中性子の数
- 電子の数
- 塩素-37の中性子はいくつですか?(塩素の陽子は17個です。)
- 重水素の中性子はいくつですか?
- ある元素は、80%が質量10、20%が質量11です。平均の原子量はいくつですか?
- 臭素は50.69%が臭素-79(78.918)、49.31%が臭素-81(80.916)です。平均の原子量はいくつですか?(小数第2位まで)
- 塩素の原子量が37より35に近いのはなぜですか?
- 塩素原子の約4個に3個が塩素-35だから
- 塩素-37は放射性で、なくなってしまったから
- 電子が軽くしているから
- 炭素-14の半減期はどれくらいですか?
- 57年
- 5,730年
- 5.7百万年
- 炭素-14が80 gある試料があります。11,460年後には何グラム残っていますか?
- 半減期三回分のあと、もとの炭素-14はどれだけ残っていますか?
- 炭素-12と炭素-14は、化学反応のしかたがちがいますか?
- いいえ。電子が同じなので化学的性質も同じ
- はい。炭素-14は結合をつくらない
- はい。炭素-14のほうが電子が多い
- 同位体:陽子が同じで中性子がちがい、化学的性質は同じ。
- 原子量は、同位体の加重平均です。
- 塩素:35 × 75.76% と 37 × 24.24% → 約35.45
- 炭素-14の半減期:5,730年
このコースの出典 (10)
- IUPAC periodic table (iupac.org/what-we-do/periodic-table-of-elements)
- NIST Atomic Weights and Isotopic Compositions (physics.nist.gov/cgi-bin/Compositions/stand_alone.pl, elements H, C, Cl, Br)
- NIST CODATA 2022 proton-electron mass ratio (physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?mpsme)
- NIST radiometric dating note, carbon-14 half-life 5,730 years (nist.gov/image-19154)
- APS News: discovery of the electron 1897 (aps.org/apsnews/2000/10/discovery-of-the-electron)
- Fermilab timeline (fnal.gov/pub/inquiring/timeline/02.html)
- APS News: Rutherford and the atomic nucleus 1911 (aps.org/apsnews/2006/05/rutherford-discovery-atomic-nucleus)
- APS News: Bohr model 1913 (aps.org/apsnews/2012/03/bohr-model-atom-rutherford)
- APS News: Chadwick and the neutron 1932 (aps.org/apsnews/2007/05/may-1932-chadwick-discovery-neutron)
- NobelPrize.org James Chadwick biography.
確認日: 2026-10-17