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変異と遺伝

ヨルダンの人々を対象にしたある研究では、ABO式血液型の遺伝子の26.1パーセントがA対立遺伝子でした。生物学者が進化と呼ぶのは、こうした数値の変化のことです。

自然選択がはたらくのは個体どうしのちがいだけで、しかもそれが遺伝するちがいである場合だけです。よい食事のおかげで背が高くなった子どもがいても、そのせいで背の高い子が生まれるわけではありません。ジムで鍛えた筋肉も次の世代には伝わりません。ダーウィンもウォレスも多くのばらつきが遺伝することは知っていましたが、そのしくみはどちらも知りませんでした。答えはすでに発表されていました。グレゴール・メンデルは『On the Origin of Species』の数年後の1866年にエンドウの実験を発表しましたが、1900年まではほとんどだれにも読まれませんでした。1940年代までに、生物学者はメンデルの遺伝学とダーウィンの選択を結びつけました。この組み合わせを総合説(現代的総合)といいます。

新しいばらつきはどこから来るのか

おもな源は2つあります。1つは突然変異、つまりDNAの変化で、まったく新しい対立遺伝子を生む唯一の源です。突然変異は、生物が生き残ったり子を残したりする可能性を下げることも、上げることも、まったく変えないこともあります。最後のものを中立な突然変異といい、多くの突然変異は中立です。もう1つの源は有性生殖です。新しい対立遺伝子をつくるわけではありませんが、卵や精子はどれも親の対立遺伝子をちがう組み合わせでもつので、子はそれぞれ新しい組み合わせを受けとります。ただし動物には注意点があります。皮膚の細胞や肝臓の細胞に起きた突然変異は、その体の中にとどまります。次の世代に届くのは、卵や精子をつくる細胞の変化だけです。

下の実験室は、すべて中間色の架空の甲虫100匹と、色を気にしない鳥(選択圧0)から始まります。「次の世代」を何回か押してみましょう。突然変異によって淡い甲虫や濃い甲虫が少し現れ、選択がないので、その割合は世代ごとに偶然で上がったり下がったりします。次に選択圧を上げると、棒グラフが樹皮の色のほうへ傾いていくのがわかります。

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すべての甲虫は中間色の樹皮の上で中間色から始まります。選択圧は0、突然変異率は5パーセントなので、新しい色合いが現れ、偶然によって変動します。樹皮を「すすけた樹皮」に、選択圧を50パーセントにすると、選択がはたらき始めるようすがわかります。

集団の中の対立遺伝子を数える

集団遺伝学は、1つの家族ではなく集団全体に目を向けます。対立遺伝子頻度とは、集団内のある遺伝子のすべてのコピーのうち、特定の対立遺伝子が占める割合です。OpenStaxは実例をあげています。ヨルダンでの研究によると、ABO式血液型の対立遺伝子はAが26.1パーセント、Bが13.4パーセント、Oが60.5パーセントで、合計すると100パーセントになります。集団遺伝学では、進化とは世代を経て対立遺伝子頻度が変わることを意味します。自然選択はその起こり方の1つです。もう1つは遺伝的浮動で、まったくの偶然による変化であり、小さな集団で最も強くはたらきます。たとえば島などで少数の個体が新しい集団をつくると、その対立遺伝子はもとの集団と同じにならないことがあります。これを創始者効果といい、遺伝的浮動の特別な場合です。

変化しない集団

1900年代の初め、数学者のゴッドフリー・ハーディと医師のヴィルヘルム・ワインベルクは、何も変化をもたらさないときの集団のすがたを示しました。一方の対立遺伝子の頻度をp、もう一方をqとすると、p + q = 1です。交配の相手がでたらめに決まるなら、遺伝子型はホモ接合の優性がp²、ヘテロ接合が2pq、ホモ接合の劣性がq²となり、p² + 2pq + q² = 1です。このモデルは、とても大きな集団で、突然変異も移住も選択もないことを前提にしています。そんな集団は現実にはありませんが、そこが大事な点です。野外で数えた値が予想とちがえば、何かがその集団にはたらいているということです。OpenStaxの例では、500株の植物の集団で、紫のVがp = 0.8、白のvがq = 0.2です。モデルの予想は、VVが0.64 × 500 = 320株、Vvが0.32 × 500 = 160株、vvが0.04 × 500 = 20株です。

変化の速い集団では、この考え方が実際に役立ちます。インフルエンザウイルスはすばやく増え、突然変異もよく起こすので、流行する株は年ごとに変わります。科学者は毎年、株がどう変化してきたかを調べ、次のワクチンに入れる株を選びます。去年のインフルエンザの予防接種が今年はあまり効かないことがあるのはこのためです。

遺伝子型式p = 0.8、q = 0.2500株のうち
VVp²0.64320
Vv2pq0.32160
vvq²0.0420
合計11.00500
突然変異DNAの変化。新しい対立遺伝子を生む唯一の源
中立な突然変異生存や繁殖に影響しない突然変異
対立遺伝子頻度ある遺伝子のすべてのコピーのうち、1つの対立遺伝子が占める割合
遺伝的浮動偶然によって対立遺伝子頻度が変わること。小さな集団で最も強い
創始者効果少数の個体から始まった新しい集団が、かたよった対立遺伝子の組み合わせをもつこと
ハーディ・ワインベルクの法則進化していない集団では p² + 2pq + q² = 1
ポイント
  • 選択がはたらくのは遺伝するちがいだけです。
  • 突然変異は新しい対立遺伝子を、有性生殖は新しい組み合わせをつくります。
  • 進化 = 対立遺伝子頻度の変化。選択も浮動もその原因になります。
  • ハーディ・ワインベルクの法則:何もはたらかない集団では p + q = 1、p² + 2pq + q² = 1。
  1. まったく新しい対立遺伝子を生む唯一の源は何でしょうか。
    • 突然変異
    • 有性生殖
    • 自然選択
    • 遺伝的浮動
  2. ある女性がトレーニングでたくましい筋肉をつけました。子どもはその筋肉を受けつぐでしょうか。
    • いいえ、その変化は卵のDNAにはない
    • はい、必ず受けつぐ
    • 息子だけが受けつぐ
    • 10年間トレーニングした場合だけ受けつぐ
  3. 大人の肝臓の細胞に突然変異が起きました。これは次の世代に伝わるでしょうか。
    • いいえ
    • はい
  4. ヨルダンの研究でのABO式の対立遺伝子頻度は、Aが26.1パーセント、Bが13.4パーセントです。Oの対立遺伝子頻度は何パーセントでしょうか。
  5. 500株の植物で p = 0.8、q = 0.2 です。ハーディ・ワインベルクの法則で予想されるVvの株はいくつでしょうか。
  6. 同じ集団です。紫の花(VVまたはVv)をつける株はいくつと予想されるでしょうか。
  7. ある集団で、個体の9パーセントが劣性の形質を示しています(q² = 0.09)。qはいくつですか。
  8. 同じ集団でq = 0.3のとき、ヘテロ接合(2pq)と予想されるのは何パーセントですか。
  9. 実験室で選択圧を0にしたとき、世代ごとに体色の割合が変わるのはなぜですか。
    • どの甲虫が親になるかという偶然と、突然変異
    • 鳥が濃い色の甲虫を食べること
    • 甲虫が自分で色を変えること
    • 何も変わらず、割合は一定のまま
  10. ハーディ・ワインベルクの法則のモデルについて正しいものはどれですか。
    • 突然変異も移住も選択もない集団を表している
    • 現実の集団のほとんどを正確に表している
    • 血液型にしか当てはまらない
    • qはいつもpより大きいとしている
  11. インフルエンザのワクチンが毎年変わるのはなぜですか。
    • ウイルスがすばやく変異し、流行する株が変わるから
    • ワクチンは1年で傷んでしまうから
    • 人のDNAが毎年変わるから
    • 冬の気温が年ごとに違うから
このコースの出典 (12)
  • OpenStax Biology 2e , 18.1 "Understanding Evolution", 18.2 "Formation of New Species", 19.1 "Population Evolution", 20.1 "Organizing Life on Earth" (openstax.org/books/biology-2e)
  • Natural History Museum London "Who was Alfred Russel Wallace?" (nhm.ac.uk/discover/who-was-alfred-russel-wallace.html)
  • "Charles Darwin: History's most famous biologist" (nhm.ac.uk/discover/charles-darwin-most-famous-biologist.html)
  • "What is natural selection?" (nhm.ac.uk/discover/what-is-natural-selection.html)
  • Dino Directory "Archaeopteryx" (nhm.ac.uk/discover/dino-directory/archaeopteryx.html)
  • Darwin Online, Darwin and Wallace 1858 Linnean Society paper, read 1 July 1858 (darwin-online.org.uk/converted/published/1858_species_F350.html)
  • University of Oxford Museum of Natural History Learning Zone "Peppered Moth natural selection experiments" (learningzone.oumnh.ox.ac.uk/peppered-moth-natural-selection-experiments)
  • USGS "The Laws of Superposition and Cross-Cutting Relations" (pubs.usgs.gov/gip/fossils/laws.html) and "Geologic Time" (pubs.usgs.gov/gip/70039222/report.pdf)
  • University of Chicago Shubin Lab "Tiktaalik" (shubinlab.uchicago.edu/research-2-2)
  • Smithsonian Human Origins "Introduction to Human Evolution", "Genetic Evidence", "Laetoli Footprint Trails", species pages Australopithecus afarensis, Homo erectus, Homo neanderthalensis, Homo sapiens (humanorigins.si.edu)
  • Extension Horses "Why can mules not reproduce?" (horses.extension.org/why-can-mules-not-reproduce)
  • Britannica "archosaur" (britannica.com/animal/archosaur).

確認日: 2026-10-17